せららばあどの随想録

エンターテインメントを哲学する

お笑い賞レースの矛盾と功罪 ー笑いのSDGs対策ー

お見送り芸人しんいち(敬称略、以下同様)が優勝した2022年のR-1グランプリについて、松本人志は、今年の審査員(陣内智則、バカリズム、小籔千豊、野田クリスタル、ハリウッドザコシショウ)はみな現役世代なので、自分と同じタイプの芸には投票しない傾向…

差別と自虐と笑い(1)渡辺直美を笑うこと

女性芸人の見た目をイジることが議論されている。 その渦中にいる3時のヒロインの福田さんは、見た目イジりを止める理由は、単純に客が笑わなくなったからだという。だとすれば当然の判断だ。 では、なぜ客は笑わなくなったのだろうか? そこにはやはり女性…

東京03飯塚さんのツッコミがテレビ向きでない理由

東京03第二十一回単独公演「人間味風」 @The Garden Hall tokyo03.22th 前日にアメトーーク!で「東京03飯塚大好き芸人」が放送され、追い風状態での追加公演2日目。 「お笑い芸人」とか「キングオブコント王者」とか、そういう毒素が抜けて、どこにでもいる…

バカリズムとアドラーと渋谷の若者たち

バカリズムライブ「image」 @草月ホール 渋谷の街で騒ぎ立てる若者たちを見て、あなたはどう思うだろうか。 愚かな奴らだと蔑む気持ちがある一方で、 わずかでも「ちょっとうらやましい」という感覚が、ないと言えるか? 自分も本当は東京のど真ん中でオシ…

「コントのブラックホール」ザ・ギース単独ライブレポート

ザ・ギース第15回単独ライブ「スプリングボンボン」 @恵比寿エコー劇場 コント師と呼ばれる人は多いけれど、ザ・ギースは少し違う。 彼らの特徴はコントに対するメタ認知の能力、 つまり「コントをすること」に対する俯瞰の視点を持っていることと、 さらに…

「芸人にあって役者にないもの」 小林賢太郎作 舞台『カジャラ第四回公演』レポート

「コント集団カジャラ 第四回公演 怪獣たちの宴」 作・演出:小林賢太郎 暗がりの中、杖をつく老人らしきシルエットが現れる。 そのシルエットは次第に杖を、巧みに、いや滑稽に操り、コント再開前にすでに笑いを生む。 マイムのクオリティからして、それは…

「不老不死は素敵じゃないか」 舞台『伯爵のおるすばん』レポート

『伯爵のおるすばん』 脚本:中嶋康太(Mrs. fictions) 不老不死もののSFによくある、「主人公の孤独と死ねない苦しみ」というのが好きではない。 たしかに孤独も苦しみもあるだろうが、それを不老不死者の絶対の運命と決めつけてしまうのは、可死者の傲慢…

「歴史の闇を笑う罪」 平田オリザ「ヤルタ会談」レポート

『ヤルタ会談』(平田オリザ演劇展 vol.6) 作・演出:平田オリザ コミュ力が問われる最たる場は、外交だろう。特に戦時中。 ヤルタ会談は、終戦間際のソ連、アメリカ、イギリスによる首脳会談であり、共通の敵をもつまったく立場の違う国同士の調整の場であ…

ラーメン二郎吉祥寺店のせいで新しい店に行けなくなった話

ラーメン二郎といえば、その見た目のインパクトのほかに、「呪文」と呼ばれる独特の注文方法も有名だ。 いくつかの店舗に行ったが、この呪文はおおよそ、ラーメン二郎での共通言語として通用している。 しかし、私が知るなかでは、今はなき吉祥寺店は、呪文…

「孤独か他人か、どっちも地獄」 舞台『出口なし』レポート

『出口なし』 脚本:J.P. サルトル 演出:小川絵梨子 出演:大竹しのぶ、多部未華子、段田安則 「地獄とは他人のことである」 サルトルの有名な言葉が舞台作品として表現されている。 この言葉のインパクトが強すぎて、「人間って怖いよね」という皮肉を表現…

ロシアW杯は日本サッカー史の走馬灯だった

歴史を塗り替えることはできなかった。 ワールドカップ8年周期説はまた更新され、 初出場の1998年から2018年まで、挫折と躍進を交互に繰り返している。 日本代表の活躍に誰もが驚いたが、私は同時に、思い出すことも多かった。 この大会はただの繰り返しでは…